サンタクロースに恋をした
「おはよう、安藤」
「おう、おはよ」

 安藤はいつものように爽やかな顔を私に向けてくれた。

 そうだ、この笑顔に心を救われて、私は彼の隣にいようと心に決めたんだ。

 時が経つと忘れてしまうのは人間の悲しい性。それが自分にとってすごく大切なことだとしても、時はそれをも奪ってしまう。

 だから、常に振り返る必要がある。特に、大切なものに関しては。

「ねえねえ、フレンチトースト、安藤が作ったでしょ?」
「え? なんで?」
「だって、なんか少し焦げてたから」

 不器用ながらに料理をしている安藤の姿を想像すると、可愛いなあと笑ってしまう。

「まじか、あれ意外と難しいのな」
「そだね、でも、美味しかったよ、すごく」
「お、おう。なんか今日やけに素直だな」
「もう、偶にはいいでしょ?」

 私ってそんなに普段は素直じゃないかな? なんて思うと、少し反省。

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