サンタクロースに恋をした
 教室を見渡すと見えるいつもの日常が、気持ちを少し変えるだけで新鮮に見えてくる。

 同じものも、自分の心もちようではモノクロから色彩鮮やかになる。

「そろそろクリスマスだなー」
「そうだね」
「平川はさ……誰とクリスマス過ごしたい?」

 なんだろう、安藤の表情、いつもと違う。

「んー、莉子でしょ……あとは、やっぱり莉子かなあ」
「なんだよー、俺の名前出てこないじゃん」
「ははっ、嘘だよ。安藤と過ごしたいよ。当たり前じゃん」
「そっか」

 頬杖をついて、私の顔を見て、今までになく柔らかく笑う安藤に、一目惚れをしたときのような胸の高揚感を覚える。

 今日の安藤は、やっぱり雰囲気が違う。いつもはただのやんちゃな男子って感じなのに、今日は余裕のある大人、という感じで。

「なんか変わったね、安藤」
「そうか?」
「うん、なんていうか……心に余裕がある感じ?」
「んー……なんだろうな、俺自身は特にいつもと変わらないけど」
「そっか」

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