サンタクロースに恋をした
 調理室に近ついても中から音が聞こえなくて、安藤なにしてるんだろ? と思いながら扉を開けたら、まさかの光景が目に入ってきた。

「あんたたち、なにやってんの?!」

 莉子の声が響く。

「ち、違っ」

 安藤の青ざめた顔が視界に入ってくる。違う? なにが、違うの?

「最低」

 安藤と丸山さんが、キスをして……。え、どうして…………?

「大きい声聞こえてきたけど、なんかあった?」
「先輩……。あ、私……今日は帰りますね」

 分からない。分からない。なにも分からない。なんで、安藤と丸山さんが? 

 何も考えたくなくて、とにかく急いで玄関に行く。
 
 靴を履き替えて、外に出たその時。

「那美ちゃんっ」

 私を追ってきたのは、先輩だった。
 握られた腕、止まる脚。

 ああ、雪が降っている。今年初めての雪、だよね? ちらちらと白い雪が落ちてくる。

 それを見ていると、涙も同時に地面に吸い込まれていく。

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