サンタクロースに恋をした
「あっ」
「姉さんから聞いて来たんだけど、わざわざ2年前のお礼を買って来てくれたって」
「あ、はい。苺大福好きな友達がいて、その子に教えてもらった苺大福なんですけど」
「え、苺大福……?」

 渉先輩の顔が明らかに変わる。さっきまでの無表情に、色がついた。本当に、苺大福が好きなんだなって伝わってくる。

「これ」

 袋を先輩に渡す。自然と先輩との距離が短くなる。ていうか……やっぱり顔がすごく整っていて、それだけで緊張が高まる。

 私だけかな、この距離に心臓をバクバクとさせているのは。

「今食べてもいい?」
「は、はい」

 渉先輩は早速袋から苺大福を取り出すと、まずはそれをじっくりと目で確認し始めた。いろんな方向から、それを見ている。私はその間に和菓子に合う緑茶を用意する。

「じゃあ、頂きます」

 先輩は苺大福に一礼してから食べ始めた。

 無言で食べ進めていく。美味しいかな、それとも口に合わなかったかな……?

 梨衣名先輩はまだ来ないし、沈黙が心に痛い。それに、あまりにも静かすぎて私の鼓動が先輩の耳にまで届いてしまいそう。

 少しして、ようやく先輩は声を出した。

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