サンタクロースに恋をした
「あ、あの。先輩」

 私のことにも目を向けて欲しくて、必死に言葉を紡ぐ。

「私、先輩の優しいところが、その……好きなんです。あの時、ハンカチのおかげでどん底だった気持ちが救われました」

 自分の中にある気持ちを、秘めていその思いを、先輩に伝える。

「それは……僕の内面のことを言ってくれてるの?」

 先輩は苺大福から私へと視線を移した。

「はい」

 少しの恥ずかしさが襲ってくる。でも、伝えないよりはいい。

 先輩は、一旦口を閉じた。少し考えた後に、また口を開く。

「……そっか。なんだろうね、あの日、君を見たときに捨てられた子犬みたいに見えて、放っておけなかったんだ。だから、せめて涙を拭くハンカチくらいをと思って」

 ああ、あの時の先輩の目だ。傷付いた心に優しい光を届けてくれる瞳。この瞳に、私は惚れたんだ。

 緊張感のあるこの空間に、ぴーっと音が鳴り響く。

「あっ、緑茶、煎れますね」

 その瞳をずっと見ていたら、好きだという言葉を声に出してしまいそう。

「うん、ありがとう」

 いいタイミングで梨衣名先輩がようやくやって来た。
「ごめんね、遅くなって」

 そのタイミングはまるで頃合いを見計らっていたような、本当はずっと扉の前にいて私たちのやりとりを聞いていたんじゃないかと疑いたくなるほど。

「あら、苺大福もう食べてるの?」
「あ、先輩にも買ってきたんです」
「ありがとうっ。じゃあ……那美ちゃんにはこのプリンあげるね」

 それは今まさに買ってきましたという冷たさで、やっぱり梨衣名先輩、気を遣ってくれて……?
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