サンタクロースに恋をした
 2時間後。
「さ、最後。あれ、もう、なんで死んじゃうの? あんな最後ってないよ。せっかく、皆が助かって安心したところに、あいつ、許せない」

 まさかのラストに、涙が溢れて溢れて止まらない。
 
 心の中は映画のことでいっぱいいっぱいになって、他のことは考えられない。

「おま、泣きすぎだろ」

 とか言ってる安藤だって、目が充血してるし。隣で密かに泣いてたの、知ってるんだから。

「あんただって涙目じゃん」
「まあ、たしかに感動はしたよ。でも俺の場合漫画で読んでるから展開分かってたし……それに、どんな涙であろうが好きな奴の前で涙は見せないのが男ってもんよ」
「なにそれ」
 
 不覚にもその言葉に笑ってしまう。

 不思議だな、映画を見る前までは心の中が黒い霧で覆っていたのに、今はそれが晴れている。相手は安藤なのに。今まではただの隣のやつ、だったのに。

「てか、漫画持ってんの?」

 あの映画の続き、ぜひとも見たい。ていうか、映画の前の話も知りたい。

「ああ、貸す?」
「うんっ、お願いしますっ」

 涙をたくさん流しすぎたせいか、安藤がポップコーンを半分以上食べたせいか、お腹が空いてくる。

「ねえ、なんか食べない?」

「だな」

 映画館の近くのカフェで注文を終えて席に座る。周りを見るとカップルが多くて今更ながらに安藤と2人だというこの状況に心がざわついてくる。

 わ、私たちは周囲からどんなふうに見られてる? やっぱり……恋人? 
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