サンタクロースに恋をした
 時は流れて秋になった。姉さんに頼まれて入部している料理部に、「偶にはどう?」と言われて来てみた。

 そこには、彼女がいた。

「あっ……」

 彼女の目が僕を捉えると、その目は丸くなり小さな声が漏れている。

 その表情から察するに、多分彼女は僕のことを覚えている。あんな一瞬の出来事、しかも2年前なのに……。

「私の弟の渉(わたる)よ。今年どうしても部員が1人足りなくて、席だけ置いてもらってたんだけど、偶にはどう? って誘ってみたの」
「そう、なんですね」

 でも、彼女から僕のことを知っているという素振りはなく、このまま知らないふりをして過ごそうかとも思ったけれど、なんだかじれったく感じてきて僕は口を開いた。

「君、泣いてた子だ。確か……2年前のクリスマスの日」

 わざと、少し考えてからあの日のことを言う。

「え、あ、そ、そうです。あの、あの時は本当にありがとうございましたっ」

 ほら、やっぱり。

「え、なあに? 2人とも知り合いなの?」
「知り合い……と言えば知り合いか」

 僕と彼女の関係を考えてみたけど、いまいちしっくりとくるものがなかった。

「ハンカチを、貰ったんです」
「ああ、あの子が那美ちゃんだったのね。話は聞いてるわ。運命の再会ね」
「う、運命だなんて」

 運命……。それってよくドラマとかである男女の運命の再会とか……?

「運命……とか知らないけどさ、僕、彼女いるし」

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