サンタクロースに恋をした
「……え?」
突如ふんわりと香ってきた苺の甘い香り。いい匂い。
まるで、クリスマスのショートケーキのよう。
「ハンカチ、使ってください」
まるでサンタクロースのような赤と白のセーターを着て、首元にマフラーをぐるぐる巻きにした男の人が立っていた。
瞳が、光に照らされてグレーに輝く。吸い込まれそうな瞳の色……。
「でも……」
見ず知らずの私に……?
「涙で顔が濡れてると寒いでしょ?」
その人は、なんとも現実的なことを言う。その言葉が意外過ぎて、その言葉に持っていかれて、心の重りがすっと軽くなる。
「あ、……はい」
その人は私に無理矢理それを握らせると行ってしまった。