サンタクロースに恋をした
「あ……」
「あれ……」

 渉先輩だ……。先輩は私の顔を見て

「……これ、食べる?」

 と、苺のチョコレートをポケットから出すと、私に差し出してくる。

「また、泣いているの?」
「え……?」

 言われてから、頬触ると、確かに濡れていた。

 気付かなかった。私、悲しいんだ。安藤が他の子に手作りのお菓子を貰ってて、そのことが心を不安定にさせる。

「ごめん、今日はちょっとハンカチ忘れて……。そのチョコ、美味しいんだ。ハンカチの代わりってわけじゃないけど……」

 あの時と同じ、優しい声。ふんわりと私の心を包み込んでくれる。

「先輩は……本当に優しいんですね」

 また、渉先輩に助けられた。

「……ありがとう」

 早速チョコレートを口の中に入れる。

 そのチョコレートはすごく甘かった。苺のふんわりとした香りが口の中に広まる。甘い甘いチョコレート。私の心こ固さを解してくれる甘さ。

 チョコレートが全て口の中で溶けて言葉を発しようとしたとき。

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