サンタクロースに恋をした
「平川」

 安藤の姿が目に入って来た。急いできたのか少し息が上がっている。

 私を見た後に、先輩に視線が移る。

 先輩も、その方向に目を向けた。先輩と安藤の目が合う。

「えっと……クラスメイト、かな?」
「あ、あの……」

 そうだよ、ただのクラスメイト。

 それ以上でもそれ以下でもないじゃない。そんな人に涙を流すなんて、私どうかしてる。そう思うのに、すぐそれは声になって出てこない。

 それはもう、安藤が私の中で『ただの』クラスメイトじゃなくなったという証拠で。

「先輩、ですよね。すみません。こいつにちょっかい出すの止めてもらえますか?」

 口を開いたと思ったら、安藤はとんでもないことを話す。

「ちょっかい……?」
「な、何言ってんの安藤」

 そんな恥ずかしい事、よく平気な顔して……。だいたい、私は安藤のものじゃないし先輩がそんなこと言われる筋合いない。

 先輩だって、そんなこと急に言われたら困るじゃない。

「彼氏、かな?」
「いえいえいえいえ、違います」

 それは誤解して欲しくない。

「今は、俺が好きなだけですよ」

 そんなにはっきり言われると、安藤の顔が見られなくなる。ていうか、今はって、そのうち私が彼女になるような言い方……。

「そっか……。じゃあ、僕邪魔だね。もう行くよ」
「え、先輩っ」

 安藤が来たせいで、先輩との2人きりの時間に終止符が打たれてしまった。

 しかも、なに『俺が好きなだけですよ』とか言っちゃってるの? 

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