サンタクロースに恋をした
「平川。さっきのことなんだけど、あれただの誤解で、さっきの女子は委員会が一緒なだけだから」

「そんなの、どうでもいいよ。どうして邪魔したの?」

 もっと先輩との時間を過ごしたかった。苺の風味を味わいながら、先輩と話をしたかったのに。

「ごめん、邪魔するつもりはなかったんだ」

 邪魔するつもりはなかったって、思いっきり邪魔してるじゃない。

「じゃあ、あんなこと言わなくてもよかったじゃない」
「……ごめん。俺も必死で」

 そっか……、恋をすると誰でも必死になる、好きな人しか見えなくなる。

 そう考えると冷静になってきて、安藤を責める気持ちが無くなっていった。

 それに……元はと言えば私が先輩のことで傷付いていたのを安藤が励ましてくれたんだ。

 なのに、私安藤に対して酷いことを……。今言った言葉を取り消したい。安藤に謝りたい。

「…………私さ、先輩の連絡先知らないんだ」
「うん」
「でもさ、先輩って苺大福好きで、莉子も苺大福が好きで、それを言ったら先輩莉子の連絡先欲しいって。私は知らないのに。2人とも苺大福好きっていう共通点があるから。私の知らないところで仲良くなっちゃたりするのかなあって思うと、すごく寂しくて」

 今まで自分一人の心の中に仕舞っておいたその言葉。誰かに話すと、心が軽くなる。

 安藤はもしかしたらこんな話聞きたくないかもしれないけど、何故だか止まらない。きっと、甘えているんだ。安藤なら聞いてくれるって。

 安藤なら、私を受け入れてくれるって。寄り掛かっているんだ。

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