サンタクロースに恋をした
「ぜ、全然集中できなかった……」

 ただでさえ興味が無くてつまらない古文と地理の授業なのに、さっきの先輩のことが気になりすぎて、余計に先生の言葉はほとんど頭に入ってこなかった。

「ねえ、どこから聞いてたと思う?」
「うーん……多分、全部だな」

 ってことは……いやあああああ。さっきの会話を聞かれていたなんて、恥ずかしすぎてもう2度と会えない……。

「穴があったら入りたい……。もう先輩の顔なんて見れない……」

 あんなの、告白してるの一緒だもん……。

「いや、それは無理だと思うぞ」
「え、なんで?」
「ほら」

 安藤の視線の先にいたのはまさしく先輩の姿で、私はつい鞄で自分の顔を隠してしまう。え、どうして?

 いやいや、きっと幻だよ。

 鞄を横にずらしてもう一度同じところを見ると、やっぱりいる、先輩が。

 しかも、こっちを見ていて、手なんかを振っている。
「お前、無視するなんて失礼だぞ? 仮にも先輩なんだから」

 はあっと、何故だか安藤が溜息をつく。

「それ、前に同じような事あんたに言ったことあるような……」

 と、過去の記憶を思い起こそうとすると、安藤が2度目の溜息をついた。
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