サンタクロースに恋をした
「あんた……自分が傷付かないように演じてるわけ?」

 時藤のその言葉は心に突き刺さる。 

「は?」
「本当は、好きでたまらないのに、あの子はあんたのことは男として見てくれないから」

 図星だった。だから、否定もしない。

「……まあ、そうかもな」

 時藤は鋭い。でもそれは、もしかしたら友達であるあいつを守るためなのかもしれない。

「そういうところ、そういうところがさ、いいのかもって私は思うんだけど。自分を犠牲にできるところ。ただ好きってだけじゃ無理じゃない? 相手の幸せを願うことって。それに、あんたが本当に那美が好きなんだって伝わってくる」

 時藤は俺が考えていることとは正反対のことを話す。意外だった、そんな風に俺のことを見てるなんて。

「お前も相当あいつが好きなんだな」
「友達ですから。だいたい……あの先輩って、来るもの拒まず、なんでしょ? 好きじゃなくても女子と付き合えるタイプ。結構残酷じゃない?」

 そんなの、今まで知らなかった。あの先輩が? そんな風には全然見えなかったけど……。むしろ……。

「あんたはさ、今日だって、手作りお菓子拒否ろうとしてたじゃん。まあ、あの子の圧が凄くて結局受け取ってたけど」
「ま、まあな。あれはまじで怖かったわ」

 思い出してもゾッとする。言葉と目から伝わってくる圧に、『大丈夫』と言うことが出来なかった。

「そういうあんたの優しさがあればあの子も前に進めると思うの。だからもっと頑張りなよ」
「って言ってもさ……」

 完全に先輩しか見てないしな、あいつ。

 でも、あいつだって知ってると思う。先輩が来るもの拒まずなことくらい。

 好きなのに知らないわけがない。

 だとしたら先輩がそうなってしまった理由が何かあるんじゃねえのかと。先輩の表情が乏しいのも気になるし……。

「まだ俺らだって先輩のこと全て知ってるわけじゃないしさ。あいつの気持ちも尊重しようぜ?」
「まあ……あんたがいいならいいんだけどさ」

 時藤は俺にそれを言いたかったのか、それを言うと俺の前からいなくなった。


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