サンタクロースに恋をした
 10月の中旬になった。流石にブレザーなしでは寒く、久しぶりにそれに腕を通す。

 ブレザーって、生地が硬くて動き温くてあんまり好きじゃないんだよな……と思いながら朝からどんよりと暗い空を見た。

「おはよう」
「おう」

 平川は首にマフラーを巻いている。まだ眠そうな目で席につく。

「最近、先輩とはどうよ?」
「……別に何も」
「そうか」

 あの時の時藤の言葉が未だに頭の中に残っていて、あの時はこいつの気持ちを尊重したいとも思ったけど、よくよく考えるとそれはそれで残酷なのかもしれない。

 だって、時藤の話が本当だとしたら、その先輩とやらは告白されたらとりあえず付き合う、という風に考えられるし、そんなやつが平川と付き合ったとして、次は別の意味で平川が傷つくんじゃないかと。

 そしたら次こそ平川は男を受け入れられなくなるだろう。

 それに、好きじゃなくても付き合えるとしたら、平川がもし告白したとして、それも受け入れるんじゃ?

 でも、それってこいつにとって嬉しいことなのか?

「なあ」
「ん?」

 だからと言って、俺は何を話そうとしているんだ。

「いや……」
「何よ、言いかけで止めるなんてなんか気持ち悪いじゃん」
「いや…………その、先輩ってさ……好きじゃなくても女子と付き合うんだろ?」

 なるべく言葉を選んで……。

「…………かもね」

 やっぱり、知ってたか。だよな、知らないはずがない。

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