サンタクロースに恋をした
「でも、先輩にだっていろいろ過去があるんだよ。表面だけ見て先輩のこと判断して欲しくない」

 平川の声は低い。これ以上先輩のことを言うのは多分平川を怒らせる。

「分かってるって。ごめんごめん」
「てかさ、それって誰が言ってたの?」 

 時藤、なんて言ったら絶対こいつ何かしらあいつに問い詰めるだろう。

「風の噂でさ。ほら、後から知ったけど結構有名らしいじゃん、あの先輩。顔がいいから」
「……顔がいいから、まあ、そうだよね」

 なんだろう、平川の表情が一瞬曇ったように見える。俺は何か言ってはいけないことを言ってしまったのか?

「そ、それよりさ。化学の宿題やった? 今日のやつむずかったよな」
「え?」

 平川はなんのこと? と言う目で俺のことを見る。

「え?」
「そんなのあった?」
「あったよ。まさか忘れた?」

 化学の先生は学年1厳しいことで知られていて、宿題を忘れなんて言ったら放課後は18時まで化学一色になる。

 しかも宿題を忘れたのが自分1人なら、18時までマンツーマンというなんとも嬉しくない環境。

 俺はまだ幸運なことにそれを経験したことはないけど、経験したやつによるとまさに地獄らしい。

「やばいやばい、午後だよね?」

 一気に平川の顔が真っ青になる。

「ああ」
「やらないとっ」
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