サンタクロースに恋をした
 平川は、今日の午前中や昼休み、全てを化学の宿題に費やしていた。

 無事に化学の授業を終えると、平川は大きく溜息をつく。猫みたいに背伸びをしている。

「はあ、なんとか乗り切れた……」
「お疲れ」

 分かりやすいほどに顔が死んでる平川の顔を見ると、笑いがこみ上げてくる。

 いやいや、笑ってみろ。またキレられるぞ。そう分かっていながらも1度でも考えるとそれはなかなか消えてはくれなくて、俺は口元に力を入れてなんとか耐えた。

「あ、あのさ……」
「ん?」
「今日、放課後暇? スイートポテト作るんだけど、部活で」

 何故俺に?

「で?」
「一緒に来ない? 莉子は今日ピアノでさ、あんた暇でしょ? 部活入ってないし」
「お前、なんか酷いな」

 確かに暇だけど。 

「じゃあ、来てくれるよね?」

 好きなやつの頼みを断る男なんてどこにいるだろうか、もしいるならそいつを殴りたい。

 それに、相当行きたくないのだろうか、化学が終わったにも関わらず表情が晴れない平川の姿を見ると放っておけない。

「分かったよ」
「ありがとうっ」
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