サンタクロースに恋をした
 朝、教室から窓の外を見ていると登校してくる彼女の姿が見える。青色のマフラーは、彼女の白い肌によく似合う。

「あ……」

 その後ろから、例の彼もやって来る。

 その彼に気づいた彼女は彼の方を見て何か話していて、彼はころころと表情を変えている。

 笑ったり、しかめっ面をしたり。彼女は彼女で心を許しているようで、素の自分、という感じだった。

「黒川、何見てんの?」
「いや…………。なんでも」
「んー?」

 目黒は確かめるように窓の外を見るが、そこには登校している生徒が複数いるし、僕が誰を見ていたかなんて分からないだろう。

「そういやお前、最近告白断ってるらしいな」 

 どこからその情報を得てくるのか、狭い学校内ではすぐに噂が広まる。

「まあ……」
「まさか、ようやく好きな奴でも出来たわけ?」

 にやにやと笑いながら聞いてくる目黒から目を逸らす。

 好きな人……まだそこまでの感情を彼女に抱いているのか、正直分からない。でも、確実に僕の中でその存在は大きくなっている。

「え、まじ? 黒川ようやく人になれたのか」
「なんだよ、人って」
「いやいや、中学の時からお前のこと知ってる俺から見たらさ、感慨深いもんよ。そうか、お前の心を開いてくれる女神にようやく会えたのか」

 1人、うんうんと頷きながら話す目黒。感慨深いって、まるで幼い頃からずっと僕と一緒にいたかのような言葉だな。

「女神って、大袈裟な」
「いやいやいや、まあ、フラれないようにな」

 肩にぽんっと手を置く目黒、そうは言っても大分その状況に近いんだが。

 さっきも、2人で話している時楽しそうだったし、2人の世界が出来上がっていて、そこに入ることはできなくて……だいたい、僕といる時にはあんな顔はしない。

 笑わないから。

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