サンタクロースに恋をした
 街はクリスマスじゃなくて、ハロウィン仕様になっている。

 今日は、前から約束していた先輩と莉子と3人で苺大福を食べに行く日で、私と亜紀はすでに待ち合わせ場所に着いていた。

「私やっぱり用事あるって言って帰ろうか?」

 莉子は気を遣ってくれてそんなことを言うけれど、2人きりなんて今の私には早すぎる。

「ええ、だめだめ。先輩と2人きりだと私緊張で死にそうになるから。心臓がもたないよ」
「もう、そんなこと言ってたら前に進まないじゃない」

 そう言えば……街にはカップルの姿がいつもよりも多くなってきた。

 皆、クリスマスに向けて恋人を作っているのかな、なんて考えると、あの時の記憶が蘇って来てちょっとだけ切なくなる。

 でも、安藤や先輩のおかげで、今は前よりも心が軽くなった。

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