サンタクロースに恋をした
 数分後、私服の先輩が現れた。

「ごめん、待たせた?」
「あ、いえ……」

 初めて見た先輩の私服姿は、シンプルイズベストという言葉が似合い、決して派手じゃないのに存在感がある。

 制服とは違う雰囲気に、早くも私の鼓動は早く動き出す。

「じゃあ、行こうか」
「はい」

 苺大福に集中しよう。

 どんなものだろう、餡子は普通の餡子かな? それとも白餡? あ、もしかしたら苺の香りの新しい餡子だったり! 

「……那美?」
「へ、あ、ごめんごめん。苺大福のことを考えてた」 
 先輩のことを考えないために、なんてことはもちろん言わない。

「那美ちゃん、苺大福好きになった?」
「あ、……はいっ、あの、苺の酸味と餡子の甘さが本当に合いますよね。2人がはまるのも納得です」 

 そう言えば前から気になっていたけど、『那美ちゃん』っていう先輩の呼び方、すごくずるい。

 先輩からしたら普通なのかもしれないけど、名前で呼ばれるのはなんだか特別感っていうか、そういうのを勝手に感じてしまうから。
< 81 / 157 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop