サンタクロースに恋をした
 …………片思いって、こんなに辛かったっけ? 

 ちゃんとした恋から遠ざかっていたせいで、分からなくなる。恋って、どんなものだったかというのとを。
 
 これなら、私だけを見てくれる、私のことを好きな人を好きになった方が幸せなんじゃないかな……。

 せっかく目の前に美味しいお菓子があって、お洒落なカフェにいるのに、些細なことでそれが全部ひっくり返される。

 安藤は私のことを見てくれる。私のことを庇ってくれる。私に面白い映画を見せてくれる、漫画だって貸してくれる。 

 私のことを、いつも思ってくれる。

「那美? また考えごと?」
「あ、ううん、大丈夫」
「那美ちゃんどうかした?」
「いえ、本当に大丈夫ですよ」

 私は無理矢理笑顔を作った。
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