サンタクロースに恋をした
 扉の方を見ると確かに人影があって、見ていると渉先輩の姿が現れた。

 嘘……どこから話を聞いていたんだろう……。 

「彼と……付き合うことにしたんだね」
「あ……はい」

 気持ちを固めたと思ったのに、先輩の姿を見た瞬間揺らぐ私の心。安藤の顔がちらつく。

 付き合うと伝えてくれた時に、あんなに顔を真っ赤にして心の底から喜んでくれて、そんな人を裏切るようなこと、出来るわけない。

「いいの?」
「姉さん……」

 2人は、私には分からない会話をしている。なんだろう……全然読めない。

「私、そろそろ行かなくちゃ。人を待たせてるし。また遊びに来るねっ」
「あ、はい」

 先輩の言葉が嘘だというのはなんとなく想像がついた。

 だって、用意した紅茶を淹れてもいないもの。 

 梨衣名先輩がいなくなって、2人きりになる。

 ……気まずい。 

「渉、先輩?」

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