サンタクロースに恋をした
「いや……あのさ……僕、那美ちゃんの言葉に救われたんだ。過去にいろいろあったんだけどさ」

 多分それは前に先輩が言っていたのもの。 

「那美ちゃんが僕の内面を見てくれる人だっていうのがすごく嬉しくて……だんだん君に惚れていった。初めて人を好きだと思った」
「え……」

 それは考えもしなかった言葉。私のことを好きだという先輩に、目が離せない。

「ごめん、こんなタイミングで」
「本当に、どうしてこのタイミングなんですか…………?」
「那美ちゃん?」

 涙が出てくる。そんな風に思っていてくれたのに全然気が付かなくて、挙句の果てに莉子には嫉妬して。  
 私がもっと先輩をちゃんと見ていれば、注がれるその気持ちに気付いていれば……。

 でも、流れた時間を元に戻すことなんて出来なくて、それにこんなことを思うのは安藤のことを傷付ける。

「ごめんなさい」
「いや……いいんだ。彼といる時の那美ちゃんはすごく楽しそうだし、お似合いだよ。僕とじゃ、あの笑顔は那美ちゃんから引き出せない」 

 先輩は笑っていた。初めから諦めていたような雰囲気で。

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