サンタクロースに恋をした
 私……安藤といる時、そんな顔をしているの? 

 でも、先輩といる時に笑えないのは好きだからで、緊張してしまって表情が固くなってしまうからで。

「好きだから、先輩の前ではうまく笑えなかったんです」 

 それだけは伝えたい。嫌いとか苦手とか、そんなんじゃなくて、好きだからこそそうなってしまっていた。 

「僕のことを、好き……?」
「……2年前のクリスマスの日から、先輩のことだけを考えてたんです」

 今更言っても遅いのに、言葉は止まってくれない。言葉を紡ぐほどに、安藤に対しての罪悪感が大きくなってくる。

 だめ、もう、これ以上先輩に好きだという気持ちを言うのはだめ。

「でも……彼の方が思いが強かった。だから、那美ちゃんの心を動かした。結局僕は、彼には勝てない」
「……そうかも、しれないですね」

 人生はタイミングが命とテレビの中で誰かが話すのを聞いたことがあるけれど、本当にその通りだと今思った。

 きっと、私と先輩のシナリオは、これが正解なんだ。初めからこんな風になる運命だったんだ。だから、この現実を受け入れないと。

「じゃあ、気を付けて」
「先輩も」

 何事もなかったかのように部活を終えて、帰宅する。これでいいんだ、これでいい。
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