サンタクロースに恋をした
「シラナカッタヨ、アマイモノズキダッタナンテ」
「なんだよその棒読み。お前、面白いな」  

 安藤は、私の髪の毛を、くしゃくしゃと猫みたいに撫でる。大きい、安心する男子の手。

 ううん、それは違う。安藤の手だからこそ感じられるんだ。

 ああ、やっぱり間違ってなかった、安藤を選んだこと。

 だって、こんなに笑顔にさせてくれるんだもん。口元が緩んで、自然と笑みが溢れる。その時、渉先輩の言葉が頭に思い浮かんだ。 

 『僕とじゃ、あの笑顔は那美ちゃんから引き出せない』。多分、こういうことなんだ。

「あ、あの……」
「ん……?」

 誰かが、話し掛けて来たような。だけど聞いたことのないその声。聞き間違えかな……?

「あのっ。料理部、私入部したいんですけど、いいですかね!?」

 それは、急な展開だった。



< 93 / 157 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop