サンタクロースに恋をした
 平川さんが先輩を好きなのはすぐにわかった。

 それに、先輩を見れば分かる。先輩も多分、平川さんのことが好き。

 なのにどうして平川さんは安藤くんと付き合っていて、先輩はそれに対して何も言わないのか。私には理解できなかった。

「あー、まあ、そうだな」
「……なんで安藤くんは、平気なの?」

 安藤くんはその言葉を聞くと同時に眉を下げる。少し、意地悪な質問をしすぎたかな……。

「仮に平川にまだ先輩への思いが残ってたとしても、あいつは俺を選んでくれたし、俺の前で笑ってくれる。俺はさ、平川がもしいつかやっぱり先輩が好きって言っても、それを止めるつもりはない。でも、確かに言えるのは今この瞬間は平川は俺に笑いかけてくれるってことで、俺はあいつが明るい表情してくれるなら、それでいいと思ってるよ」

 安藤くんの顔は慈悲深い。

 その言葉からは、その言い方からは、嘘という文字が少しも見えなかった。

 ああ、この人は本当に平川さんが好きなんだ。ちゃんと、心から……。

「……そうなんだ」

 羨ましい、と思った。そして、そんな風に思える安藤くんに対して、純粋に素敵な人だと思った。

 今まで私の周りにいた人たちとは違う。そう、私は今安藤くんが平川さんに向けている気持ちが欲しかった。別に恋人じゃなくたっていい。

 友達でもいい。私と一緒に心から笑ってくれる人、そんな相手が欲しかった。

「安藤くん…………私と友達になってくれない?」
「友達? もちろん、せっかくこうして同じ部活に入部した仲間だもんな」

 安藤くんの笑顔には、裏がない。

 ただ真っ直ぐ私のことを見て、そこには不純なものが何もなくて、晴々しい笑顔。眩しいほどに輝いている。惹きつけられる。その、純粋さに。

「てかさ、丸山さんは先輩が好きなの?」
「あ、その……」
「いや、なんとなく、よく先輩のこと見てるなあと思ってさ。同じ中学だったっていうし」

 安藤くんは鋭くもあった。

「……うん、で、でも、同じ高校っていうのは偶然で」

 そこだけはストーカーと思われたくなくて、必死に否定する。

 話している途中で、扉の開く音がした。

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