恋の糸の先で……
一応貴族という身分だが、田舎のためかアンの暮らしは庶民と大差ない。使用人と共に母はキッチンに立っている。華やかなパーティーも開催することはほとんどなく、アンはこういった雰囲気が苦手だった。

「アン様、そろそろ歌をお願いします」

「わかりました」

壁際でワインを飲んで同じ田舎出身の貴族の友達と話していると、使用人に声をかけられる。アンは友達に「行ってくるわ」と伝え、人々が集まるパーティー会場の中心へと歩いた。

「パーティーをお楽しみの皆様、これからアンお嬢様がご自慢の歌をご披露します!」

使用人がそう言った刹那、アンに多くの視線が集まる。アンはやはり人前に立つのは慣れないな、と思いつつも演奏が始まってしまったので、息をしっかり吸っていつものように歌う。

アンの歌声に、会場は一瞬にして静まり返る。誰もがアンの美しい歌声に聞き惚れているのだ。アンが歌い終わり、頭を下げると拍手と「素晴らしい!」という声があちこちから響く。
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