恋の糸の先で……
「よろしいのですか?私のような下流貴族がルーサー様のお屋敷にお邪魔するなど……」

アンは不安になりながら訊ねる。ルーサーはいつもアンに会いに来る時も、高級な生地で作られた立派な衣装でやって来る。しかし、アンは豪華なドレスなどは持っていない。庶民が着ているのより少し高いだけのワンピースだ。

一応、同じ貴族なのにと俯いてしまうアンの手を、シャノンが「何を仰るのですか」と優しく握る。

「アンお嬢様は素敵な淑女です。礼儀作法は完璧で歌も素晴らしい。私が見た中で最も美しい方です」

「あ、ありがとう……」

近い距離で褒められ、アンはドキドキしてしまう。するとルーサーも「アンはとても可愛いよ」と微笑みながら言ってくれた。そしてアンはルーサーとシャノンに手を取られる。

「さあ、行きましょう」

「さあ、行こう」

二人に連れられ、アンは今まで乗ったことのない豪華な馬車に乗せられる。そして屋敷の中にいる母や使用人に何も言わないままルーサーの屋敷へと連れて行かれた。
< 6 / 13 >

この作品をシェア

pagetop