彼女を10日でオトします~裏話・番外編~
 ガバ。はあ、はあ、はあ。
 あ、あれ?

 勢いよく起きてみれば、見慣れた私の部屋。隣にいた(はず?)の変態野郎の姿もない。
 手のひらで、肩を確認する。

 な、なあんだ。ちゃんと、パジャマ着てるじゃない。

 と、いうことは、さっきのは夢……?

 あ、悪夢うぅぅ!?なんて目覚めの悪い夢なのかしら。物凄くリアルだったわ。

 私、病んでる?

「ギャアァァァァァ」

 隣の部屋から、上がる悲鳴。間違いなく、お姉ちゃんの声。今度はなに?

 のっそりベッドからはい出て、扉を開けた。そこから、上半身だけ出して様子を伺う。

「たーかーし!起きて!!大変よお!」

 うん。お姉ちゃんの大変は、いつもの事。で、悲鳴の理由はなにかしら。

「検診!!予約、すっかり忘れてたわ!あと30分しかないのよお」

 はあ、また、か。

 はっきり聞こえる、お姉ちゃんの悲鳴ともとれる声に比べて、貴兄の声は、ボソボソとしか聞こえない。

「だから、貴史!!コレ着て。
駄目!今すぐよ。
はい、うだうだ言ってないで、脱ぐ!」

 検診の度に、予約を忘れるお姉ちゃんは、もう、うっかり者のプロって言ってもいいと思う。

「響ちゃあん!きょーちゃあん!」

 お姉ちゃん、そんなに大声出さなくても聞こえてます、と心の中でしっかり唱えてから、お姉ちゃん夫婦の寝室に顔を出す。

「はあい」

「お姉ちゃん、これから、病院行ってくるから。朝ご飯は、下に用意してあるわ」

「あのお、お姉ちゃん、私の眼鏡……」

「それから、今日は、たすく君もくるから。二人、仲良くね。……ふふふ。
じゃあ、行ってくるわあ」

 お姉ちゃんは、まだ目を擦る貴兄を引きずって、階段を駆け降りて行ってしまった。

 わ、私の眼鏡は、どこに隠したのよ……。


           了
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