【極上の結婚シリーズ】ママになっても、御曹司に赤ちゃんごと包み愛されています
いっちゃんはすぐにやってきた。その表情は今まで見たこともないくらい強張っている。

「そこに座りなさい」

旦那さまの指示にいっちゃんは、どうして莉帆の家なのに父さんが我が物顔で振る舞うんだ? と言いたげだった。

向かい合うソファに座っていた私と旦那さまの近くに来ると、いっちゃんは少し間隔を空けて私の隣に座った。するとすぐに泉が駆け寄り、私たちの間に無邪気に体を割り込ませてくる。あの動物園の日と同じく、泉は私といっちゃんに挟まれてうれしそうだった。

「どうして父さんがここにいるんだ? つか、いつから莉帆と連絡を取っていたんだよ?」

いっちゃんは次々湧いてくる疑念を抑えきれない様子だ。

私は生きた心地がしなかった。

「今まで隠していてすまない。私は莉帆ちゃんが樹の前から姿を消したあとも、ずっと連絡を取り続けていたんだよ」

旦那さまは正直に明かした。

いっちゃんは眉をひそめる。

「え?」

「そもそも、莉帆ちゃんが行方をくらます手引きをしたのは私なんだ」

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