【極上の結婚シリーズ】ママになっても、御曹司に赤ちゃんごと包み愛されています
パーティーまでの十日間、私はするべきことを淡々とこなすことにした。
そのひとつとして、辞めた職場に制服などの貸与品を返却に行かなければいけない。
私があまりに突然退職したから、いっちゃんにかなり不審がられた。仕方なく事情を話すといっちゃんは、「その人が見かけたのは本当の父親だと言えばいいじゃないか」と憤った。私が一方的に追い込まれたのが許せないようだった。けれど私は今さら彼らに事実を伝える気にはならず、「いっちゃんが怒ってくれて、わかってくれるだけで十分だよ」と自分の胸の内だけで収めた。
バックヤードに矢野さんしかいない時間帯を見計らい、私はホテルに向かう。
けれどそこはなぜか無人で、私は困り果てた。
しばらく待ってみたけれど、矢野さんが戻ってくる気配はない。黙って品物だけを置いて帰るわけにはいかず、出直そうと踵を返したときだった。
バックヤードのドアが開いて誰かが入ってくる。
「あら、白上さん」
そう目を瞬かせたのは、同じ客室清掃員だった六十代の女性、江口さんだった。
そのひとつとして、辞めた職場に制服などの貸与品を返却に行かなければいけない。
私があまりに突然退職したから、いっちゃんにかなり不審がられた。仕方なく事情を話すといっちゃんは、「その人が見かけたのは本当の父親だと言えばいいじゃないか」と憤った。私が一方的に追い込まれたのが許せないようだった。けれど私は今さら彼らに事実を伝える気にはならず、「いっちゃんが怒ってくれて、わかってくれるだけで十分だよ」と自分の胸の内だけで収めた。
バックヤードに矢野さんしかいない時間帯を見計らい、私はホテルに向かう。
けれどそこはなぜか無人で、私は困り果てた。
しばらく待ってみたけれど、矢野さんが戻ってくる気配はない。黙って品物だけを置いて帰るわけにはいかず、出直そうと踵を返したときだった。
バックヤードのドアが開いて誰かが入ってくる。
「あら、白上さん」
そう目を瞬かせたのは、同じ客室清掃員だった六十代の女性、江口さんだった。