【極上の結婚シリーズ】ママになっても、御曹司に赤ちゃんごと包み愛されています

「郷田さんの旦那ね、数年前に一回りも若い子持ちのシングルマザーと浮気して出てったのよ。それから郷田さんは幼い娘ふたりをひとりで育てているの。ここのパートだけじゃなくて、いくつも仕事を掛け持ちしてるみたいよ。それで心に余裕がなくて、若くてかわいい白上さんに嫉妬したんだろうね」

郷田さんが置かれている状況を初めて耳にし、私は息を呑んだ。

「だからって郷田さんを許してあげてなんて言わないよ。この話をしたのは、白上さんの心のわだかまりが少しでもなくなればいいなって思ったからだから。おしゃべり好きのおばさんの余計なお世話だから、さらっと聞き流してね」

江口さんは明るく笑いながら私の肩を叩いた。「がんばって」と私を励まし、再び客室の清掃に向かう。

どうして郷田さんが私にきつく当たったのか、腑に落ちた気がした。

もちろん私には、彼女を許せるほどの強さはない。

けれどせめてもう二度と、彼女がほかの誰かに私にしたのと同じことをしませんようにと、そう願う。