【極上の結婚シリーズ】ママになっても、御曹司に赤ちゃんごと包み愛されています
一階分の階段を下り、ふたりでホテルに向かう。
5301号室、インペリアルスイートルームは、いっちゃんが今夜泊まる予定で取っていたらしかった。
広々とした贅沢な空間は、最高峰の部屋そのものだった。まるで中世ヨーロッパのお城に迷い込んだみたいで、私はつい挙動不審に動き回ってしまう。こんなにすごい部屋に入ったのは初めてだった。けれどいっちゃんは平然としていて、慣れているように見えた。幼い頃とは違い、いっちゃんは私の知らないところで私が経験したこともないようなことを当たり前にしているのだろうか。なんだか少しいっちゃんが遠く思えた。
部屋に入るなり、いっちゃんはルームサービスでたくさんの料理や飲み物をオーダーしてくれる。
「ったく、珠緒さんが亡くなってから、母さんは莉帆を家政婦か何かだと思ってるよな」
いっちゃんは不満げにネクタイを緩めた。
珠緒さんとは、私の祖母のことだ。祖母は五十歳から二十五年間、亡くなる直前まで住み込みで犀川家の家政婦をしていた。そんな祖母を奥さまはとても頼っていて、今ではその信頼を私に向けてくれている。私としては喜ばしいことだったし、その期待に応えたかった。けれどいっちゃんは、あまりそれをよく思っていないようだ。
5301号室、インペリアルスイートルームは、いっちゃんが今夜泊まる予定で取っていたらしかった。
広々とした贅沢な空間は、最高峰の部屋そのものだった。まるで中世ヨーロッパのお城に迷い込んだみたいで、私はつい挙動不審に動き回ってしまう。こんなにすごい部屋に入ったのは初めてだった。けれどいっちゃんは平然としていて、慣れているように見えた。幼い頃とは違い、いっちゃんは私の知らないところで私が経験したこともないようなことを当たり前にしているのだろうか。なんだか少しいっちゃんが遠く思えた。
部屋に入るなり、いっちゃんはルームサービスでたくさんの料理や飲み物をオーダーしてくれる。
「ったく、珠緒さんが亡くなってから、母さんは莉帆を家政婦か何かだと思ってるよな」
いっちゃんは不満げにネクタイを緩めた。
珠緒さんとは、私の祖母のことだ。祖母は五十歳から二十五年間、亡くなる直前まで住み込みで犀川家の家政婦をしていた。そんな祖母を奥さまはとても頼っていて、今ではその信頼を私に向けてくれている。私としては喜ばしいことだったし、その期待に応えたかった。けれどいっちゃんは、あまりそれをよく思っていないようだ。