【極上の結婚シリーズ】ママになっても、御曹司に赤ちゃんごと包み愛されています
午後二時になると、暗澹としたまま退勤し、託児所に泉を迎えに行ってからレジデンスに帰った。

エントランスに二十四時間体制で在中しているコンシェルジュに、「おかえりなさいませ」と声をかけられ、泉が何か返事をする。どうやらおうむ返しにしているらしい。もうすぐ一歳半になる泉は「ママ」や「わんわん」など簡単な単語を話すようにはなったけれど、まだまだ宇宙語が主だった。

低層のレジデンスは五階建てで、二階から五階が住居となっている。私と泉が住んでいるのは四階の南側角部屋だ。

一戸数億円超えと噂されているだけあって、母子で住むには広すぎるし、あまりにも贅沢すぎるこの部屋の所有者は、実は犀川家の旦那さま――いっちゃんのお父さまだった。

旦那さまは唯一、泉の存在を知っている。

犀川家を出る前夜、旦那さまが私の部屋を訪れたとき、もらったばかりの母子手帳を偶然見られてしまったのだ。

頭の中が真っ白になった私は、とっさにその場で土下座した。その時点ではおなかの子の父親についてごまかせたのかもしれない。けれど私にとって旦那さまは本当のお父さんのような存在だから、嘘などつけなかった。

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