【極上の結婚シリーズ】ママになっても、御曹司に赤ちゃんごと包み愛されています
『そうだろうな。樹は血眼になって莉帆ちゃんを探していたからね。今までのふたりの関係を考えれば、応じるべきだろう。ここで逃げれば不自然だ』

すでに逃げてしまったことは、旦那さまには言えなかった。

「泉の出生については、絶対に隠し通します」

どれだけ嘘をついて自分の首を絞めることになっても、いっちゃんには明かさない。その決意だけは固かった。

『申し訳ない。樹と妻は二年前より関係が悪化していてね……。実は樹が家を出てホテル暮らしをしているのも、そのせいなんだ』

相変わらずいっちゃんと奥さまはうまくいっていないと聞き、私の気分が沈む。家族に縁の薄い私には、親子の仲が改善されるのを願わずにはいられなかった。

そうして旦那さまへの電話を切ると、一気に現実が押し寄せてきた。

明日になれば、私はいっちゃんと再び対面し、話し合わなければいけない。それがたまらなく怖かった。

今日少し顔を合わせただけでこんなにも心を揺れ動かしているのに、私は普通にしていられるのだろうか。


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