【極上の結婚シリーズ】ママになっても、御曹司に赤ちゃんごと包み愛されています
「……」

泉は無言でいっちゃんを凝視する。

「泉くんはもう話せるのか?」

いっちゃんは私に尋ねた。昔、幼い私の世話をしてくれていたくらいだから、いっちゃんは子どもが嫌いじゃないと思うけれど、まだ意思疎通がうまくいかない子の相手は慣れていないとけっこう戸惑うだろう。

「簡単な単語なら少しだけ」

「そっか。じゃあ早く覚えてくれよ。いっちゃんだぞ」

ぽんと泉の頭を撫でると、「車で来たんだ」といっちゃんは私たちを先導した。

近くの駐車場には高級車が停まっていて、その後部座席にはなぜかチャイルドシートが付いていた。

「え? どうしてチャイルドシートが付いてるの?」

私は目を丸くした。

「泉くんに必要だろ?」

「そうだけど……」

用意周到すぎて、私は困惑してしまう。

「ほら、早く乗れよ」

けれど気にするほどのことではないというように、車に乗せられた。

二十分ほど走り、着いたのは、完全個室の老舗の料亭だった。

ビルの中にあるとは思えないくらい広いお座敷は、襖や掛け軸、瓢箪の形をした照明のひとつひとつが風雅で独特の趣を感じさせる、贅沢すぎる空間だ。

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