【極上の結婚シリーズ】ママになっても、御曹司に赤ちゃんごと包み愛されています
けれどいっちゃんは気にした様子もなく、泉に顔を向ける。

「泉くんは何から見たいんだ?」

「わんわん!」

「そうかゴリラか」

さらっとゴリラに変換したいっちゃんに、私は笑う。

「いっちゃん、言ってない」

「俺は泉くんの考えていることがわかるんだよ」

きりっとした顔で、いっちゃんは遠くを見やった。

「かっこいい顔で言い放ったってだめだよ」

本当にいっちゃんはおもしろい。

緑豊かな園内を、三人で並んで歩いた。もちろん真ん中は泉で、その小さなもみじみたいな両手は、私といっちゃんにつながっている。

ゴリラゾーンには、三匹のゴリラがいた。ボスゴリラと彼の奥さんゴリラ、子どものゴリラだ。みんな家族らしい。

「見ろ、ボスゴリラの逞しい背中を」

いっちゃんはゴリラの背中をうっとりと眺めた。

「え、背中? 泉は顔が見たいよね?」

私はゴリラの顔が見やすい位置に、泉を連れて行こうとした。

けれどいっちゃんはゆるゆると首を横に振る。

「ゴリラは後ろ姿が最高なんだよ。男は背中で語ると言うだろう? 俺はゴリラの背中に、何か感じるものがある」

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