Return ー2度目の人生ー
「日茉莉ー行くよ?」
知香の呼ぶ声に はっと我にかえって、視線を彼の姿から外す。
「うん!すぐ行く!」
何故か先生の様子が気になったが、これ以上知香を待たせては行けないと思い、慌てて彼女の後を追いかけた。
「日茉莉、今日もバイトでしょ?途中まで一緒に行こ」
知香は私のバイトのことも叔父のこともよく知っていて、特になにか口出しする訳でもないが困った時はいつも黙って手を差し伸べてくれる。
「知香も春休みはずっとバイトしてたんだ?」
「まぁねー。それとパパ活とか?」
パパ活ねー…
私は想像通りの知香の返答にふぅんと相槌をうった。
「彼氏は?別れたの?」
「いやまだ付き合ってるけど」
知香はバイト先のメイドカフェの店長とかなり長い間付き合っている。
中学生までは今とは正反対のいわゆる黒髪清楚系だった彼女だけど、家庭環境を考えるとこんな風にグレてしまっても仕方がない…か。
「じゃまた明日〜」
彼女はそう言うとひらひらと手を振るので、
私もじゃあと手を振り返すと薄暗いビルの階段を降りていった。