Return ー2度目の人生ー
あの事件の後、親戚中をたらい回しにされた私が最後に行き着いたのは、遠い親戚のお婆さんの元だった。
けど、そのお婆さんも今年の冬に亡くなってしまい、私はアル中の叔父の元へ預けられた。
高3の春、始まる新たな新生活が最悪な状況であることはもはや言うまでもない。
叔父とはできるだけ顔を合わせない方が良い。
なので私は、叔父が家に居る時間はできるだけキャバクラでバイトしている。
もちろん、年齢を偽って。
「ミライちゃーん!お願いします!」
「はーい!今行きます!」
ミライというのはいわゆる私の源氏名。
No.1ではないけど、この仕事もそこそこ上手くやっている方だと思う。
「ミライちゃん今日も来てあげたよー!」
はぁ、また来た
この人すぐ触ろうとしてくるからなぁ…
「高屋さん!ありがとうございます」
中年太りの気前の良さそうな男性の横に
私は内心とは裏腹の笑顔を向けて座る。
鼻息も荒いし、距離も近いし、最悪。
「はぁ〜ミライちゃんは本当に可愛いし
良い身体してるよねぇ」
そう言って男の手が、グラスの中の氷を掻き混ぜている私の太ももに伸びる。
「もう!高屋さん!」
はっと気づき、ギリギリのところで私は男の手を掴む。
…危なかった〜
わたしは内心ため息をつきながらも笑顔でその手を引き離した。