Return ー2度目の人生ー
授業時間を15分も残して出ていった先生を気にもとめず、教室の彼らは文化祭の話をするどころかたわいもない雑談をかわしている。
いつも通りぼーっと窓から景色を眺めていると、向こうの校舎の窓から、タバコを吸っている先生の姿が見えた。
さすが、無気力教師...
「何ニヤついてんの?松原さん」
さっきまで突っ伏して寝ていた武島颯が、丸い目をこちらに向けて聞いてきた。
「別にニヤついてないよ」
わたしはいつの間にか緩んでいたらしい頬に手をやる。
「あ、西村ちゃんタバコすってんじゃん。やるなー」
武島くんはガバッと起き上がり、私越しに見えた風景に呟いた。
その声に近くにいた男子も気づいてみんなで笑っている。
「ハハッ西村っち最高だわ」
それにしても、あだ名が2転3転するのは先生の宿命なんだろうか。
「ねねっ、松原さん!」
声をかけてきたのは後ろの席の女の子。
「私、中山 美桜(なかやま みお)!美桜って呼んで」
振り返ると元気のいい可愛らしい笑顔を私に向けて言った。
「松原日茉莉 よろしく」
「私、松原さんとずっと仲良くなりたかったんだ〜!」
「な、なんで?」
予想外の発言に私は戸惑いを隠せない。
「だって、美人だし、頭良いし、それにクールだしかっこいいから!」
「はじめていわれた、、」
「へぇ、松原さんもそんな顔するんだぁ」
驚いた表情を見せたあとニコニコと笑顔になる。コロコロと表情の変わる彼女は見ていて飽きない。
どんな顔してたんだろ私…
「あ、そうだ、日茉莉ってよんでいい?」
「…いいけど」
やったぁ!と嬉しそうに喜ぶ美桜は今までに出会ったことのないタイプ。
この出会いが良い出会いならいいな…。