Return ー2度目の人生ー

「お兄さん。なにやってんの?」


突然低い声が頭の上で響いた。

その瞬間掴まれていた腕が解放される。

見上げるとスーツを着た黒髪サラリーマンと、
その横にバーテンダーらしき格好をした茶髪の男性がいた。


「誰だテメェら」


男は2人を睨みつけた。


「女の子嫌がってんじゃん。」


茶髪の男性が明るく言った
が、その目は笑っていない。


「調子乗ってんじゃねぇぞこら!」

男は勢いよく殴りかかると黒髪はその拳を鷲掴みにしてひねりあげた。


…うわ、強い


「いってぇぇええ」

黒髪はかまわず力を込めるので
男の叫び声が路地に響き渡った。


「やめときなよ、春斗に手出すと怖いよ」


茶髪の男性がにっこりと微笑むと、
解放された男は怯えながら走り去っていった。



「君、大丈夫?」

茶髪の男性は先程とは違う笑顔を私に向けた。


「すみません、ありがとうございます。助かりました」

呆然と立ち竦んでいた私は、急に声をかけられて慌ててぺこりと頭を下げた。


「一人?春斗家まで送ってあげなよ」


「は?なんで俺が」
黒髪が茶髪を睨む


「いやいや、結構です。1人で帰れるんで」

私はこれ以上お世話になるまいと全力で首を振って歩き出した。


「まぁそんなこと言わずにさ、家どの辺なの?」


「...北区ですけど」


「ほらぁ春斗の家に近いじゃん!」



茶髪が声を上げるといつのまにか私の前にいた黒髪が私に向かってヘルメットを投げた。
私は慌ててギリギリのところでキャッチする。


「なんですか、これ」


「ヘルメット」
黒髪がすました顔で言う


「っ、それは分かってます!」


「乗れよ」
黒髪はため息をついたあと、
親指をくいっとして後ろにあるバイクをさした。



「俺。高原 楓(たかはら かえで)!春斗良い奴だから大丈夫だよ!気をつけてね」


私は高原さんに背を押されて渋々ヘルメットを被りバイクの後ろに座った。



「行くぞ」
< 5 / 33 >

この作品をシェア

pagetop