Return ー2度目の人生ー
「あの!名前、、」
私は後ろからバイクの音に掻き消されないように大きめの声で聞いた。
「…西村春斗。お前は?」
低い声だがしっかりと耳に残るその声に私はなぜか惹かれた。
「日茉莉、、松原日茉莉です」
「お前さぁ、あの辺で働いてんの?」
「そう、ですけど。」
「あの辺はやめた方がいいんじゃねぇか」
今日の出来事を踏まえてか、あそこの治安を懸念してか、多分その両方なのだろうが彼の最もな意見が胸にささる。
「わかってます。、、でも働かないと」
…この人に言っても仕方ないか
私の境遇はこの男には分からないのだろうと
妙な苛立ちを覚えたとき、
「なぁ、横見てみ」
そう言われて私は顔を上げた。
「わぁ、綺麗」
思わず声が漏れる。
コンクリート塀の奥には月に照らされてキラキラ光る海が広がっていた。
潮風の匂いと心地よい風が頬を撫でる。
「スピード上げるから掴まれ」
西村さんはそう言うと私の腕を掴んで自身の腰にまわした。
…わ、意外としっかりしてる
見た目よりもガッチリとしたその肉体に内心驚きながらも、私は大人しくその頼もしい身体に掴まった。