その背は美しく燃えている【中編】
その背
目覚めたのは病院だった。佐野が聞いた話によると、あのあと運転手がブレーキをきかせていたため、電車はすぐに停車。奇跡的にも唇や目、頭などにわずかな傷を負っただけだけで済んだらしい。
家族もバレー部の部員も担任も、全員が佐野の生還を泣いて喜んだ。けれど何日待てども凪は見舞いに来ず、ついに退院日を明日に控えてしまった。きっと彼女のことだから責任を感じているに違いない。佐野はそれだけが気がかりだった。