崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
 アイリスは剣を握ると、席を立ち上がった。

 控え室に向かうと、アイリスの対戦相手、ジェフリーは既に準備ができた状態で待っていた。

「チビって逃げ出したかと思ったぜ」

 目が合うや否や小馬鹿にしたように鼻で笑われて、アイリスはちょっとムッとした。
 トーナメント戦の相手は各師団長が引いたくじ引きで決まる。アイリスの相手がジェフリーなのは、完全な偶然だ。

 ジェフリーは同じ騎士家系出身であるアイリスにライバル心を持っているのか、なにかと突っかかってくる。

「あなたにだけは、絶対に負けません」
「へえ? 第五師団の落ちこぼれのくせに」

 アイリスはぐっと言葉に詰まる。

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