崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
「真面目にやらない奴は、皇都騎士団には不要だ。以後、肝に銘じておけ。それと、ディーンが任務中に剣を抜かなかったのは、そこで剣で応戦すればすぐ近くにいた市民を傷つける可能性があったからだ」

 ジェフリーが顔を歪め、一礼するとその場を立ち去る。その後ろ姿を見送ったレオナルドはため息を吐き、アイリスのほうを振り返った。

「気にするな。改善すべき点は多いが、なかなかよい試合だった」

 ポンと肩に手を置かれる。

「お前は確かに線が細く、力が弱い。だが、俊敏性に関してはむしろ騎士団でもトップレベルだし、誰よりも努力している。もっと自信を持つとよい」
「……はい」

 アイリスの返事を聞くと、レオナルドは小さく頷き、アイリスの脇をすり抜けてゆく。カツカツとブーツの靴底が床に当たる音が遠ざかっていった。

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