崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
 ──レオナルド様、私が怪我をした理由に気が付いていたんだ……。

 アイリスは怪我をした右腕を、左手で摩る。
 ほんの些細なことだけれど、同じ第五師団の先輩騎士達も気付いていないことをレオナルドは状況を知っただけで理解してくれていた。そのことが、とても嬉しかった。

 アイリスは自分の胸に手を置く。

 憧れが、自分の中で段々と違うものへと変わっていくのを感じる。

 ──困ったわ。

 レオナルドは皇都騎士団の団長であり、アイリスのことを恩師の息子である『ディーン』だと思い、上司として指導している。
 それなのに、叶うことならば『アイリス』としても見てほしいと思う自分がいる。

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