崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
 それなのに、自分を棚に上げてこうすることでしかそのちっぽけな矜持を守ることができなかったのかと思うと、逆に哀れに思えた。一通りの話を聞いてから、レオナルドはジェフリーを諭す。

「真面目にやらない奴は、皇都騎士団には不要だ。以後、肝に銘じておけ。それと、ディーンが任務中に剣を抜かなかったのは、そこで剣で応戦すればすぐ近くにいた市民を傷つける可能性があったからだ」

 ジェフリーが顔を歪め、一礼するとその場を立ち去る。
 結果的にジェフリーのプライドを傷つけることになってしまったかもしれないが、これを気に気持ちを入れ替えてくれることを祈るしかない。一方のディーンは悔しそうに俯いたまま黙っていた。

「気にするな。改善すべき点は多いが、なかなかよい試合だった」

 ディーンは日々、確実に腕が上がっている。元々の体格が周囲に劣るせいで目を見張るような成果は出していないが、騎士としては成長していた。皇都騎士団の中でも平均より上だろう。

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