崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
 レオナルドは額に手を当て、眉間に皺を寄せる。

 ディーンのことは、レオナルドも初めて出会ったときに女だと勘違いした。そういう噂が立っても不思議でないほど、女性的な男なのだ。

「男ばかりの集団にいて、思考がおかしくなっているな。公開訓練から令嬢を閉め出したのがまずかったか……」
「いえ。そうではなく、ディーン=コスタは病弱で、長年ベッドから起き上がれるのもやっとの状態だと」
「ばかばかしい。入団のときにコスタ家の証明はあったのだろう? なら、あのディーンは何者だというんだ?」
「姉ではないかと」
「ディーンは国中の精鋭が集められた皇都騎士団においても遜色ない剣技だ。あんな剣捌きの貴族令嬢がいると思うか?」

 グレイルは答えることなく、肩を竦めて両肘を下り、手のひらを上に上げるポーズをした。



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