崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
 そのとき、ノックする音がしてドアが開く。ひょっこりと顔を出したのはカールだった。

「今いいか?」
「ああ」

 カールはいつものように応接用の椅子に座り、国内貴族情勢で気になる点を告げていく。
 レオナルドはカールの話を聞き入りながらも、先ほど聞いた馬鹿げた話が頭を離れなかった。

 見た目が女のようであるだけではない。
 ふとしたときに見せる表情、十七歳という成長期にありながら一向に伸びない背、声変わりを迎えない高い声。それらは全て、ディーンが女であったとすれば納得できることだった。

「カール、調べてほしい貴族がいるんだが……」
「誰だ? 怪しい動きの奴がいるのか?」

 普段は柔和なカールの表情がサッと引き締まる。

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