崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
 それは騎士団の休憩時間、詰め所で一息ついていたときのことだ。

「あぁ?」

 カインは不機嫌さを露わに眉を寄せた。

「んなわけねーだろ。お前、それを本気で信じてるわけ?」
「いや、そういうわけじゃないんだけど……」

 目の前にいる同期の騎士は、カインの怒り具合を見て言葉尻を濁す。

「じゃあ、二度とそのくだらない質問を俺にするな。ディーンに対しては、言わずもがなだ」
「わかったよ、悪かったって」

 強い口調で叱責され、同期の騎士は肩を竦めてすごすごと退散する。
 その後ろ姿を見送り、カインははあっと息を吐いた。

< 135 / 300 >

この作品をシェア

pagetop