崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
──不幸というものは、なぜこうも続くのだろう。
十四歳になったとき、家庭教師先へ行くために母が乗った馬車が脱輪し、転倒事故をおこした。打ち所が悪かった母は、医師の懸命な処置に拘わらず帰らぬ人となった。
大きな屋敷にアイリスとディーンの二人きり。
残ってくれたのは、代々コスタ子爵家に仕える僅かな使用人だけだった。
そんなある日、その男は現れた。
部屋でディーンと二人、本を読みながら自主学習をしていると僅かに怒鳴るような声が聞こえたのだ。恐る恐る階下へと降りると、家令のリチャードと知らない男の人が向き合っていた。
「誰?」
ディーンと寄り添ってそちらを窺い見るアイリスに気付いた男は、途端に表情を和らげる。
「やあ、会いたかったよ、可愛い子供達。わたしは君達の叔父のシレックだよ。君達のお父さんの弟だ」
リチャードに何かを怒鳴っていたその人──シレックは、アイリスとディーンを見るとにこやかに笑って両手を広げた。
十四歳になったとき、家庭教師先へ行くために母が乗った馬車が脱輪し、転倒事故をおこした。打ち所が悪かった母は、医師の懸命な処置に拘わらず帰らぬ人となった。
大きな屋敷にアイリスとディーンの二人きり。
残ってくれたのは、代々コスタ子爵家に仕える僅かな使用人だけだった。
そんなある日、その男は現れた。
部屋でディーンと二人、本を読みながら自主学習をしていると僅かに怒鳴るような声が聞こえたのだ。恐る恐る階下へと降りると、家令のリチャードと知らない男の人が向き合っていた。
「誰?」
ディーンと寄り添ってそちらを窺い見るアイリスに気付いた男は、途端に表情を和らげる。
「やあ、会いたかったよ、可愛い子供達。わたしは君達の叔父のシレックだよ。君達のお父さんの弟だ」
リチャードに何かを怒鳴っていたその人──シレックは、アイリスとディーンを見るとにこやかに笑って両手を広げた。